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New Face of Japan

インタビュー記事

「グローバライズしたいけど、インテグレートしたくない国」
―統合なき国際化の現実:日本社会における外国ルーツの若者の経験―

Dさん(Part2/2)

2025年05月号

New Face of Japanは、多様でインクルーシブな日本社会の発展を目指して活動しています。多様なルーツを持つ方々にインタビューを行い、その声をイラストやインタビュー記事を通して発信しています。

Project Director: Richa Ohri (武蔵野大学)
Project Manager: Nanami Goto
記事編集:Sorane

グローバライズ:グローバル化

インテグレート:統合

インタビュアー:りょうた

編集:そらね

りょうた:   なるほど。そういう申し込みをしたりするときに、再認識するというか、感じることが多いで

すよね。日本社会で生活していて、なにか排除されたみたいな経験はありますか?

 

Dさん:     やっぱり主にビザかなと思います。制度的に当てはまらないときに、できないという状況が排

除だと私は感じます。

 

りょうた:  なるほど。ちょっと言葉を変えて、差別をされたみたいな経験はありますか?

 

Dさん:   私にとっては先ほど話した授業中の質問が差別ですね。授業中にプレゼンをしているときに、

私のプレゼンに対しての質問じゃなくて国籍に対しての質問、私にとってそれは差別ですね。

 

りょうた:  もちろん。自分が差別だと感じるものは全部差別だと思います。他にどういう経験があるのか

というところを聞かせてほしいです。

Dさん:   あとは去年の授業ですね。他国の大学から学生が日本に来て、2週間一緒に過ごすみたいなプ

ログラムがありました。そのときは、ある意味で特別だけど差別みたいな感じでした。他国の学生は日本に来て茶道などの日本文化的なことをやったのですが、そのときに日本の大学の学生は、日本人だったのでそのプログラムを見てる側でした。みんな他国から来た学生が日本文化を体験しているのを見て、サポートしていました。他国の学生が着物を着るときにも、写真を撮ったり、着付けを手伝うなどのサポートをする側でした。先生への自己紹介のときも、「私は長◯の出身です」と自己紹介をしていました。でも先生が特別に、プログラムに私が参加できるようにしてくれていました。「あなたは経験したことないだろうから、着物の着付けとか茶道のプログラムにこっそり入れてあげたよ」みたいなことを言われました。私は本当にやったことないから嬉しかったのですが、日本の大学の学生のみんなにやったことあるかを聞いたときに、やったことないという人が3、4人ぐらいいました。すごいギルティ(guilty)*というか、特別だったけど、なんでだろうとも思いました。長◯出身と言ったのに、なんでそうやって勝手に私が経験してないのかなと決めつけるんだろうと思いました。いい先生ですけどちょっとステレオタイプだなと感じました。

 *ギルティ(guilty)...罪の意識のある(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

 

他国の学生が来た時も、彼らはその大学の代表として来ていながらも韓国や中国とかいろいろなバックグラウンドを持った人が関係なく来ていました。こっちも大学を代表していて、そういうふうにカテゴライズしているのに、こっちの大学は結局日本人と外国人というカテゴライズで見ていて、ある意味その時は特別だったけど、そういうところから差別が生まれてるのかなと私は感じてしまいました。勝手に私が経験してないだろうとか、顔の色とか、日本語を喋っているのに英語のメニューを出したりとか、日本どうですかと聞かれたりとか、そういうふうに扱われてるときに、やっぱり自分が喋ってる言葉で判断されてるんじゃなくて、自分の顔の色で判断されてるんだなと感じます。相手に悪意はないけど、でも差別されていると私は感じます。

りょうた:  なるほど。ありがとうございます。

▶マニュアル化された日本社会

りょうた:   次の質問ですが、多様性の観点から考えて、日本社会で生活していく中で悲しくなったりと

か、寂しくなったりすることはありますか?

 

Dさん:    ありますね。日本社会は外国人に限らずすごい孤独というか*ロンリー(lonely)な社会だな

と思います。すごく静かで、コミュニケーションが結構少ないのかなと思います。人間的じゃないと言ったら変だけど、マニュアル化された社会だなと思います。システムに沿ってみんな働いたり動いたりして、それはすごくいいんだけど、一方で、人間をロボットみたいに働かせるから孤独を感じているような気がします。それはみんな感じているんじゃないかなと思います。

 

 *ロンリー(lonely)...ひとり(ぼっち)の,寂しい,心細い(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

 

りょうた:  なるほど。確かに表面的なコミュニケーションを取るというのは結構ありますね。他の国に行

くとやっぱり人間らしさがあるというか、人間味があるみたいなものを感じますね。

 

Dさん:   日本で感じるのは、お店行ったときも、個人的な質問やニュースなどについてのシステムから

離れた話題は話さないなと感じます。会話がマニュアルに沿っていて、最初の挨拶と最後の挨拶があって、こう言われたときにはこう言った方がいいみたいなのがあるなと感じます。

​​​

りょうた:  確かにそうですね。バイトはどうしていたんですか?

Dさん:   バイトはたくさんしていました。

りょうた:  バイトでは見た目で決めつけられるといった差別を感じるような経験などはありましたか?

Dさん:   あんまりないです。とあるバイト先で働いたときは、なぜか私の給料だけが2年半働いたのに

上がらなかったりしましたけど、他のところは結構いいところでした。バイト先はいいところを選んだみたいであんまり差別はなかったです。

▶「○○人」らしさ、「日本人」らしさ

りょうた:  なるほど。わかりました。次はDさん自身の考えについて聞きたいです。周りの人はどのよう

に日本人か日本人じゃないかということを判断してると思いますか?

 

Dさん:     周りの人がどういうふうに判断しているかですか。色かなと思います。色とか見た目とかかな

と思います。日本の人だったらぱっと見たときや、あとは喋ったときの言葉もそうだと思います。

りょうた:  なるほど。その辺りも含めてこの社会において日本人である基準は何だと思いますか?

 

Dさん:     基準?日本に住んでる人だったらですかね。日本に住んでいて、日本の学校に行っていたりし

たら、日本人ですかね...。でも私は別に日本に居ても日本人になりたいとは思ってないんですよね。○○人みたいな基準というのは別になくてもいいのかなと思います。質問にちゃんと答えられてないんですが、ちょっと難しいですね。

りょうた:  なんで日本人になりたいと思わないんですか?

 

Dさん:     自分のアイデンティティがまだしっかりしてないというところもありますが、元々○○人にな

りたいというのはないですね。でも、「I’m from Japan」とか「私は日本から来た」というふうにやっぱり言いたいかもしれないです。でも、「I’m Japanese」というふうには言えないです。それはやっぱり日本人というのが、日本人だと決められてるからかもしれないです。なんかそれが自分のような人たちが今すごい締め付けられているものだと思います。「I’m American」と言ったらいろんな顔の人がいても普通だとみんな思うんじゃないかな...だから、難しいです。

りょうた:  日本人という、ある種のイメージみたいなところにはまりたくないみたいな感じですかね?

 

Dさん:     そういうふうに考えたらちょっと違うかもしれません。私はさっき日本人になりたくないと言

ったんですけど、私の中で日本人はこういう人達で、それ以外認められてないというイメージがあるんですね。だから、日本人になるとなると、日本人らしく、日本にある制度らしくならなきゃいけないというのがあって、でもそれと一緒になりたくないんです。私をこのままで受け入れて日本人だといってくれるならいいんですけどね。だから日本国籍とか持ってる人が日本人なのかなと思います。他の国を見ると、いろんな人がいるんですけど国籍を持つことで、初めて「I’m American」とか「I’m British」とか「I’m Canadian」みたいにいえるのかなと思います。

りょうた:  なるほどね。ありがとうございます。わかりました。

りょうた:  自分がその外国籍だったり他にルーツを持ってるというところで差別や排除などのディスアド

バンテージみたいなのはあると思うのですが、それが逆に何かメリットだったり良かったなと思うところはあったりしますか?

 

Dさん:     日本の中では結構少ないですね。アドバンテージ(advantages)*はないかもしれません。

構ネガティブに感じるかもしれないですが、私が感じて経験している中ではやっぱり欠点が多かったです。

 

 *アドバンテージ(advantages)...優位,利益(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

▶日本人じゃない人の美しさを見れる社会

りょうた:  なるほど。わかりました。さっきの話ともちょっとかぶってくるところはあると思うのです

が、多様性の観点から言うと日本社会はどういう課題を抱えていて、どのように変わっていけばもっとみんなが生きやすくなると思いますか?

 

Dさん:     インテグレーション(Integration)*ですかね。日本人の世界というのはすごく狭いかなと思

っているので、それを広げればいいのかなというふうに思います。日本で、大学の中で、日本人と留学生だけじゃなく、留学生以外に違う人もいるんだよ、それが普通なんだよというのを知ってほしいです。私の家族は家族滞在のビザがうまくいかなくて、そういうふうにいろんな子供が国に帰らなきゃいけなくなったり、そういう人がいっぱいいるのになぜか表に出てきません。日本というのはあんまり外の国のことを知らなくても、他国と比べるとすごい幸せに生きていけるような社会になっています。自分たちのコミュニティに私達みたいな人がいるということを知る環境の制度を作ればいいと思います。日本の制度にも外国人は結構苦しんでいるので、日本の若い人にそういうところを見てほしいなと思います。たくさんの外国人が帰らなきゃいけなくなっていて、私も9歳下の妹がいますが、日本生まれ日本育ちなのにビザが駄目になって帰らなきゃいけませんでした。でも彼女は日本人なんです。日本で生まれて、スリランカは見たこともなくて、顔の色はちょっと違うんですけどね。そういう人がどんどん家族滞在ビザがなくなったりしてしまって、日本にとってメリットになる人が日本から出ていってしまう状況があります。私も政府と何度か戦いましたが、日本は時々動くのが遅いのかなと思います。

 

 *インテグレーション(integration)...統合,調和,融合(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

日本人じゃない人の美しさを見れるような社会になってほしいと思っています。日本以上に、広くて、いろんな人がいて、その人が持ってる学んだ力やその人ができることは日本の社会にとってすごい大きいです。難民の人もそうですが、そういう人達が同じ人間であることをまず知ってほしいんです。違うけど一緒というか、友達でもいいんですけど、みんないろんなルート、ルーツを持ってるけど、でも最終的にみんな人間ってことは変わらないよねというところにやっぱり気づかなきゃいけないのかなと思います。

 

りょうた:  わかりました。ありがとうございます。

Dさん:   ありがとうございます。

▶特別だけど「差別」

▶特別だけど「差別」
▶マニュアル化された日本社会
▶「○○人」らしさ、「日本人」らしさ
▶日本人じゃない人の美しさを見れる社会

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