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くすのきしげのりさんの絵本『おこだでませんように』
本間祥子
この絵本に出会ったのは、私が大学院を修了し、新卒の小学校教諭になったときです。
当時、20代半ば。担任する子どもたちとの関わり方は常に手探りでした。
お友だちとけんかをしてしまったり、泣かせてしまったりする子どもに、
どのように接すればよいのかとても迷っていた時期でもありました。
お友だちにいじわるをしてしまう子どもの気持ちが分からず、子どもを叱ってしまうだけの自分に自己嫌悪を感じていました。
毎朝、学校に出勤するたびに、今日は何もトラブルがありませんようにと考えていました。
タイトルにもなっている「おこだでませんように」とは、絵本のなかで小学1年生の男の子が、七夕の短冊に書いた願いごとです。
男の子は、いつも怒られていました。家でも学校でもいつも怒られていたのです。
男の子が楽しいと思ってしたことも、いいと思ってとった行動も、
その場にそぐわなかったり、度がすぎてしまったりして、結局先生にもお母さんにも怒られてしまうのです。
「おこだでませんように」
これは、男の子が「おこられませんように」という願いこめて、(間違って)書いたものでした。
自分は悪い子なんだろうかと悩みながら、本当はみんなにほめてもらいたくて、こんな願いごとを書いたのです。
この本を読んでから、いつも叱られてばかりの子どもの気持ちが少し分かるようになった気がしました。
そうか、本当は先生にほめてほしくて、お友だちとも仲良くしたかったのか。
先生にほめてもらうということは、小さな子どもにとってこんなに意味があることだったのか。
そのときから、「ほめて伸ばす、がんばりを認める」ということが、私が教育者として1番大切にしたいことになりました。
そして、私自身、私の両親や恩師が、このように接してくれていたことに気がつきました。
この考えは、小学校教諭を退職し、大学で子どもの教育を研究する立場になった現在でも変わりません。
これから学校の先生になろうとする大学生たちに、子どもの教育について講義をするようにもなりましたが、
学生にもこの考えを伝えるようにしています。
いつか学生たちが教育現場に出て、悩んだり迷ったりしたときに、この本のことを思い出してもらえたらいいなと思っています。
紹介した人:ほんま しょうこ