2_edited_edited.png
書名:「ことば」の学びに寄り添う日本語教育教師の専門性を考える
―「学習と人生のつながりの軸」の形成と意識化をめざして―

(くろしお出版、2022.2.25)
 
「ことば」を学ぶ学習者と日々向き合う教育にかかわる方々へ
 
山内 薫
(明治学院大学)

 

「ことば」の学びに寄り添うとは

 

本書では、社会的文脈や単一的な目的設定を背景とする、将来において「使うあてのない外国語学習」(=将来の就業あるいは学業において使用する可能性が低い「ことば」を学ぶこと)への取り組みが注目される。このような学びの取り組みは、本書の研究協力者であるフランスの日本語専攻学生だけではなく、国外の日本語学習者、そして、国内の大学で外国語を学ぶ学部生にも共通する。「使うあてのない外国語学習」というキーワードは、英語以外の言語を外国語として学ぶ意義に関する議論において、「使うあて」があることが前提とされていることに対する問題提起となっている。

これまで日本語学習者一人ひとりの学びに注目し、日本語学習者の「生涯にわたる言語学習」を支える日本語教育のあり方に関する研究を行ってきた。本書「8-6 今後の課題と展望」では以下のように述べ、日本語教育を含む外国語教育が質的に転換する必要性と可能性を示した。

外国語の教育実践者が「学習と人生のつながりの軸」の形成と意識化という視点をもって教育実践を行うことで、海外の日本語教育及び日本の大学の第二外国語教育が、グローバル時代の人生を歩む外国語学習者の移動性を踏まえた「生涯にわたる言語学習」を支援する教育へと変わる可能性がある(p.304)。

今後、「ことば」を学ぶ学習者と日々向き合う教育にかかわる方々と、本書の問いである「ことば」の学びに寄り添うことについて議論を交わしながら、ともに、教育実践に取り組んでいきたいと願っている。

装丁デザインに取り入れられたフランス語タイトル

本書を担当していただき、大変信頼している編集者の方から、本書を校正する過程で、「装丁デザインの一案として、フランス語のタイトルを「さりげない感じ」で取り入れたものはいかがですか」とご提案いただいた。編集者の方に、英語やフランス語のタイトルを取り入れた書籍の装丁を参考に見せていただいた後、本書のタイトルをフランス語の直訳で付けてみた。そして、まず、継承日本語教育の専門家の先生からご意見を頂いた。少し経ち、本書の研究調査フィールドの大学の赴任時、そして赴任が終わって帰国後も長くお世話になっている先生に見ていただける機会があった。「山内さんのことだから、飾りのタイトルではないですよね。やはり内容を理解してもらえるタイトルがいいですよね。」という問いかけと「意訳がいいと思うけれど、アイディアはすぐに沸いてこないので考えてみます」というところから、フランス語のタイトルが出来上がるまで、10通以上ものメールのやりとりをさせていただいた。


本書では「さりげない感じ」で、そっと置かれているが、実は、本書の内容がよく現れており、輝いている。本書をお手に取っていただける方には、「ことば」や「ひと」が表現したいことを大切にされる編集者の方、先生方につくっていただいたフランス語のタイトルに、少し目を向けていただけると幸いである。
 

Enseignement des "Langues comme activité de toute une vie"
:Pour accompagner la prise de conscience et la formation du lien apprentissage-vie

本研究は科研費(21HP5053)の助成を受けたものである。