第9回
偉大な推しについて考える大人
お客様:セラピストのくるみさん
がっちゃん
???:いいですか?
あきら:あ。くるみさんいらっしゃい!!
いや~ほんとに暑いね。
くるみ:んね~~もう倒れちゃうよ、この暑さ。ママ知ってる?
あきら:うん?何が?
くるみ:まだ7月!!
あきら:知ってる笑
くるみさんは数か月前にスナックあきらの近所に引っ越してきてから、週2のペースで来てくれている常連さんである。くるみさんの一杯目は赤ワインと決まっているため、ママはすぐにボトルとグラスに手をかける。
くるみ:いや~、これが地球温暖化ってやつなのかな。
あきら:そうかもね~地球にやさしくしないとな~
くるみ:え、そういうことなの?地球温暖化って(笑)
あきら:いや、違うと思うけど(笑)
くるみ:でもさ、ほんと外で働いてる人もいるわけじゃない、世の中には。
その人たちには本当に感謝しないとだよね。
あきら:たしかにね。こんなクーラー効いてるところでくるみさんと楽しくお話して生活できてるなんて、私はずいぶん楽なお仕事をしているのかも。
くるみ:いや~そんなこともないかも??どんな仕事も大変じゃない。
ママだって、大変なお客さん相手にするときもあるし、後片付けも大変じゃない~
みんなそれぞれ大変だけど誰かにとって必要な大事なお仕事なんだよ。
あきら:おお~くるみさんいいこと言うぅぅ
くるみ:なにそれ(笑)
ま~でも、私は推しを楽しむためのお仕事ってところが大きいから。
全然なんでも行けるね。楽しめる。
あきら:推し??
あれ、くるみさん推しいんだっけ?
くるみ:もちろん。いるよ。私の推しは、時代によって変わるんだよね。
今は、動画を配信してる声優さんなの。
あきら:へ~~!!
くるみ:いや、聞いてよ。その声優さんお声だけじゃなくて、お顔もむちゃ綺麗なのよ。
それにさ、ゲームやってるところとかを配信したりしてるんだけどね。
もう、優しくて。何でそんな周りの人に配慮した声掛けと立ち居振る舞いをゲームの中でも取れるの?って感じで。しかも、香水とかにも詳しくて、配信の中でかなり詳しく話してるんだよね。美形で知的なの。いつもパワーもらってて。
あきら:わかる!わかるよ、くるみさん!!
私の推しはアイドルなんだけど、イケメンでダンス上手で歌上手い。いいところだけど、ちょっと天然でさ~エピソードトークの支離滅裂ささえも愛おしい。
あ、私の好きなアイドルの界隈では、推しじゃなくて「担当」って言ったりもするの(笑)
くるみ:存じ上げております(笑)
推しのパワー偉大よね。
どんなに大変な時でも配信見たら、いや、想像しただけで元気になれる。
あきら:それはあるね。
くるみさんの推しって...
くるみ:あ、そう。今は声優さんだけど、アニメとかゲームのキャラクターの時もあれば
一緒にオンラインゲームをやってる人だったり、
あ、最初の推しは初恋の人だったかな。
小学生の時足が速くて、運動会で団長やってて年上で。そんな人。
あきら:あ、え?くるみさんの推しって結構幅広いんだね。
推しに結構身近な人まで含まれてて興味深い。
私自分が、代々アイドル好きの家系だから、推しとか担当といえば手の届かない
芸能人とかのイメージだったな。
くるみ:たしかにいろんなジャンルの人とかものが含まれてるよね(笑)
私の中では、推しはいる/ある/考えることで自分にとってプラスのエネルギーを与えてくれるものだと思うな。あと、さっきママが言ったみたいに「手の届かなそうな人」って一つ大きなキーワードだと思ってる。
あと、最近、私の推しの傾向は、その人の生い立ちとか座右の銘とか....その人を人間として深堀していって沼ってくっていう流れが多いかな。
あきら:外見より中身ってこと?
くるみ:いや~お顔と声も好きよ。やっぱり最初はそこからよね。
でも、最近は推しが長時間の配信とか、SNSの投稿とかで自己表現する場が増えたから、これまでよりもよりパーソナリティを知れるようになったよね。
あきら:それはあるね。今までは雑誌の切り抜きとテレビ、コンサートでしか見れなかった推しが台本なしに動いてる!!雑談してる!!って最初感動したな。
くるみ:でしょ。それで、色々見たり、調べたりしていくと推しの価値観とか生き方を深く知れたような気がして、親近感がわくの。それでまた沼ってしまう。
あきら:あ、わかる。
くるみ:ライブ配信の中で、推しのおすすめのものとか、考え方とか色々話してくれるんだけど、その中には当然私の持ってないアイディアも多いの。
でも、推しが言ってたから…って思うとそれまでしてこなかったこと・考え方にトライできちゃうのが不思議。
それが結果として、私の幅を広げて、大人にしてくれているのかもしれないと最近考えてるの。
あきら:あぁ、推しのパワーがトライの源になるなんて…
やはり、推しのパワーは偉大だね。
ママとくるみさんはこの後も推し談議に花を咲かせ続け、その話は翌日の明け方まで続きました。
7月号おしまい