top of page
スナックあきら PNG_edited.png

第7回

自分で自分を知っている大人

お客様​:大学院生のカチャさん

わちゃわちゃ


客A:え~外さむ~。


客B:当たり前でしょ!もう1月なんだから(笑)


あきら:(笑)

も~お二人ともちょっと気を付けて帰ってくださいね!

新年早々けがなんてしたら大変ですからね(笑)


客A,B:は~い!ママ。ばいば~~い


あきら:ことしもよろしくおねがいしますね!


コロナ禍の規制がなくなった影響もあり、「スナックあきら」は新年早々大繁盛だ。

ママは、店の開店の5時からから閉店まで店中を駆け回り、年末年始限定でお皿洗いのアルバイトまで雇っている。

午後9時、来店客の波が一度落ちつき、ママが「ほっ….」と一息ついたとき….


カランカラ~~~ン


???:あの~すみません。ここってワインありますか?

どこか東南アジアの懐かしい香りを思い出させるような爽やかかつ、優しい雰囲気をまとった青年が茶色いドアから顔を出した。


あきら:はい!ありますよ。


???:わ~よかった!じゃあ、赤ワインください。


あきら:はい!ちょっと待ってくださいね。その前に、こちら、お通しです!


???:お通し??あ、煮物のことですね。


あきら:お通しは、頼んだ料理の前に出てくる簡単な料理のことです!

ちなみに、今日はあきらママ特製肉じゃがです♡

そして、はい、これ赤ワインです~


???:へー面白い文化ですね。僕の国にはないから新鮮です。


あきら:スナック文化…?居酒屋文化…?なんだろう(笑)

ご出身どちらなんですか?お名前も良かったら教えてください。


カチャ:僕、カチャっていいます。タイからの留学生で、今は日本の大学院に通ってます!


あきら:ほ~留学に来てからもう長いんですか?


カチャ:2020年からだから…大体3年?4年?ぐらいです。

最初は専門学校生として来日して。


あきら:ちょうどコロナの時期だね。


カチャ:そうなんですよ。だから、せっかく、日本にあこがれてきたのに

人に会う機会もそんな多くなくて。

大切な家族とも離れて最初は少しホームシック気味だったから何で日本にいるんだろうって悩むときもありましたね。


あきら:うんうん。たしかに。


カチャ:でも、僕運がよくて。

住んでるところが、寮だったんですよ。だから、授業終わったらとなりの部屋の人に会うこともできて。

あと、観光客もその時はあんまいないから人混みがあんまり好きじゃない僕としてはラッキーで(笑)

全体を見ると、ま~そこそこ楽しかったかな~みたいな感じですね。


あきら:カチャさん、ポジティブ~~♪♪


カチャ:そう思えるくらい、ほんと日本語とか日本文化が好きなんです。


あきら:そうなんだ!いつから??


カチャ:ん~最初は、小学生くらい(笑)

日本のアニメ見て育ってきて、日本語ってかっこいいな~みたいな。

日本語話したら僕もかっこよくなるかな~くらいのゆる~い気持ちで(笑)


あきら:アニメか。私と世代が同じくらいかも??


カチャ:そうかもです(笑)

で、中学に入ると、第二外国語を勉強しないといけないんです。

中国語か、日本語のどっちか。それで、日本語選んだのが始まりです。

そこから、高校も、日本語選んで、部活も日本文化で。

毎日、日本語の授業があって。

「日本語漬け」っていうんですかね。この状況。


あきら:「日本語漬け」面白い表現だね。

タイにいながらも、モチベーション保てるのがすごいな。


カチャ:僕、言語の勉強好きなんですよね。結構いろんな言語の勉強してるし、

話せるようになりたいって言う気持ちがあって。


あきら:言語の勉強が好き…、ほお。


カチャ:日本語以外にも、大体話せるのが英語と韓国語と中国語かな。

最近は、広東語も大学院の授業取ってて。広東語って、

中国語っぽくもあり、日本語っぽくもあり

韓国語っぽくもあり、タイ語っぽくもある。

なんとなく混ざった感じだなっていうのが、勉強してみた僕の感想です(笑)


あきら:え、え、え!!何か国語?!(笑)

もうそういうのって何リンガルって言うの???


カチャ:いやいや。恐れ多いです~(笑)

僕はただ、友達の言語で話してみたいなって言う気持ちから勉強することが多いんです。日本語はアニメ始まりでしたけど(笑)

あ、それで高校の話でしたよね(笑)


あきら:うんうんそうそう。ごめんなさい、びっくりしすぎて忘れてた(笑)


カチャ:高校はね、そんな感じで卒業して。次は大学。

でも僕実は、高校一年生の時から並行して1つ大学に行っていて。


あきら:ん????


カチャ:そんなことできる?って顔してますね(笑)


あきら:うん…


カチャ:タイでは、2つの大学で、高校生からご老人まで通える大学があって。

そこでは、出席じゃなくてテスト結果100%で単位が取れるんです。

そこに、高1から並行して通っていたので、

僕が高校卒業して新しく大学に入るときは、一つ目の大学の4年生であり、

二つ目の大学の1年生でもあるっていう複雑な感じになったんです。。。


あきら:面白い制度だね。頭混乱しそうだけど(笑)


カチャ:かなりハードな生活でしたね。

大学を二つ掛け持ちしてるときの期末は特に。

午前中に一つの大学で試験受けて、午後はもう片方の大学の試験。みたいな。


あきら:想像しただけで涙が出そうになってきた…。


カチャ:ま~それも日本語専攻で。

日本語が好きだって気持ちがあったから乗り越えられたんだと思います。


あきら:尊敬です…


カチャ:それで、ある日、日本留学の機会が回ってきて。

これだけ日本語について学んでるから、日本に行きたいとは前から思ってたのでね。一つ目の大学卒業のタイミングで、行くことにしたんです。


あきら:ここで、留学になるんだ。


カチャ:そうです(笑)

そこから日本で日本語の予備校半年と専門学校行って。

あ、通訳翻訳専攻の学校です。

それで、大学院の今に至るって感じですかね。


あきら:カチャさんと私、多分同い年くらいだと思うんだけど、

いろんな学校を経由して、しかも全体的にハードモードな感じで

すごい経験してきてるんだね。


カチャ:ハードモード(笑)

まあ。たしかに、どの学校でも最初の半年、慣れるまでが本当に大変ですね。

でも、それもまあいつものことだしって思えるようになりました。

あと、いろんなところ移動して、いろんなコミュニティに参加してて、

その経験が自分を見直す機会になって面白いです。

言語は、そのための道具というか。


あきら:深いね。

すっごい突然なんですけど、カチャさんにとって大人って何?

カチャさんの基準、聞きたくなっちゃった(笑)


カチャ:え~~~(笑)僕って大人なんですかね?(笑)

なんか中途半端じゃないですか?若者というか。大人というか。その真ん中??


あきら:ま~たしかに??大人になりきれないなって感覚は私も持ってる。


カチャ:もう大人か、と聞かれると僕も答えられないけど。理想は、

「自分のいいところと悪いところを受け止められる人」かな。

自分を理解するのって意外と難しいなと人生の中で感じる瞬間が何度かあって。

だからそれをできる人が大人かな~と思ってます。

それを受け止めて、アイデンティティとして持った上で、責任もっていろんなことに取り組めたらベストかな。

今のところはね!!また変わるかもしれないけど(笑)


あきら:素敵な理想の大人ですね。


カチャ:いつかなれるといいな~なんて思ってます(照)

そのために、いろんなコミュニティに入ってみて自分がどんな人なのか

より多面的に知りたくて。


あきら:すごい!!今までの話とつながった!!


カチャ:たまたまです~(笑)

スナックって楽しいところなんですね。

実は、どんな所かよくわからなくてちょっと最初は怖かったけど、

来てよかったです。


あきら:あら、そうだったんですね。

いつでも気軽に来てください。


カチャ:はい!期末の発表終わったらまた来ますね。

今度は友達も連れて!!


あきら:待ってます~!!


カランカラン


あきら:コミュニティ参加を通して、自分を知るか….

私も今年はなんか新しいこと始めてみようかな。


ママはこの後ずっと後回しにしていた、ピアノ教室に申し込むのでした…。


1月号おしまい

bottom of page