第1回
ロマンを大切に全力で楽しむ大人
お客様:時計職人を目指すひろしさん
がっしゃーーん!!!!!
あきら:あぁ…。またやっちゃった。マキコママ~~~
東西のマキコママたちが旅に出て数日が経ち、新ママは一人寂しく開店の準備を進めていた。
落としたグラスを拾っていると、、、
ガチャッ
???:おつかれー
あきら:革靴に、トレンチコート、赤い羽根のついたハットさらに、パイプをくわえてるのは….あーーーーひろし!本当に来てくれたの?!
ひろし:Hey guys. How you doing?(笑)
そこには、大学時代の友人「ひろし」がいた。
彼がカウンターに腰かけると、スナックあきらは一気におしゃれでエモい雰囲気が流れ出した。
あきら:何飲む?
ひろし:アメリカンレモネードで!
あきら:相変わらずおしゃれだわ。おしゃれというか、ん~不思議だよね
ひろし:え、そうかな(笑)
あきら:わかんない(笑)なんか、全体的に常に西部劇っぽいの。
ひろし:友達からもよく言われる、それ。
両親の影響で、幼少の頃からインディージョーンズとかパイレーツオブカリビアンみたいな洋画よく見ててさ(笑)
その影響で1940~1960年代のファッションだったりヴィンテージ雑貨が好きになったんだ。
このパイプもあーいう時代の雰囲気にロマン感じて始めたんだよ。
あきら:へーー。ロマンかぁ…。
ひろし:昔の物って何か惹きつけられるんだよね。
物を大事にしてた時代というか…今みたいに使えなくなったら買い替えてって感じじゃなかったからさ。壊れたら人の手でちょっとずつ繕ったり修理したりして。そうやって丁寧にメンテナンスをすると、この懐中時計みたいに100年経っても動くもんだからめちゃめちゃロマン感じるんだよね。
このパイプもさ、ブライヤーっていう沿岸沿いに生息してる木の素材でできてて、めっちゃ水に強いんだよね。だからメンテナンスしてやれば長く使えてさ。俺は定期的にオリーブオイル入れたり磨いたりしてメンテナンスするんだけど、その手間をかけることによってまた道具に愛着わくのよね。
あきら:職人っぽいよね(笑)
ひろし:ん~、なんかガキの頃からよく自然に遊びに行くのが大好きだったんよね。
母がボーイスカウトとか夏は虫取り連れてってくれてさ。
だからなんていうかこう、、、ワイルドに育っちゃった(笑)
今年から専門学校に行き始めたからそのうち本当に職人になれるといいな。
あきら:ん?そうだっけ?何の専門?
ひろし:時計修理の勉強する専門学校だよ。
あきら;時計?!?!そういうところもあるんだ。知らなった。
ひろし:そうそう。2年コースと3年コースがあってね。どっちも時計に関する勉強はできるけど、3年コースの方が学べる内容が多いんだ。
あきら:へーーー。どっち行くの?
ひろし:3年だよ。でも3年生の後にもう1年研究生制度があってね。4年目も通いたいと思ってんのよ。研究生は自分一人で1から時計のパーツ作って組み立てて1年かけて自分の完全オリジナルの時計を作るんよ。
俺の夢なんだけど今世界で35人くらいしかいない独立時計士っていうのになるのが憧れなんだ~
そのためには修理だけじゃなくてパーツを制作するための技術も必要になってくるからさ。
あきら:え、え、えぇぇぇ。すごい。世界で…。
ひろし:相当努力しなきゃいけないし、センスもないからほんとにイバラの道のりだけどね(笑)
まだ学校入ったばっかりで、一年の初期は時計いじるための道具作ってるんよ。あ、待ってね。
長方形の皮のカバンから取り出されたのは、ほっそーい金属たち数本。
その細さに思わず、眉間にしわを寄せて目を細めてしまう。
ひろし:これはね~真鍮から作った「受けはずし」って言って、大体先端の厚さが0.3mmくらいかな。
これはね~炭素鋼で作った探り棒ってやつで,,,
あきら:想像以上にすごすぎてもう何て言ったらいいかわからないよ。いつから時計作りたいって思ってたの?
ひろし:時計に興味持ったのは…たしか中学1年の時に親父に買ってもらった安い中華製の懐中時計だね。
人生で初めて見た「機械式」っていうゼンマイの力で動く時計だったんよ。
安くても構造がすごく綺麗でケースも透明だから実際に動いてる歯車が見えてさ。「なんてきれいなんだろう」ってホントに鳥肌たったの今でも覚えてるよ。
そんで専門入った感じ!
あきら:でも4年制の大学もいったよね。
ひろし:うん。両親の希望もあってね。
「大学卒業して、どうしてもそっちの方向に進みたいなら専門行かしてやっから」って言われて高校生の頃しぶしぶ専門の選択肢取らずに大学選んだ(笑)
あきら:あ、じゃあ大学には行きたくなかったんだ。
ひろし:んや、どうかな。大学は大学で憧れがあったんよ。
大学ってなんかロマンあるじゃん。
あきら:え?どこに~~(笑)
ひろし:学校にコンビニくっついてたり、校庭で友達とベンチ座って飯食ったりさ。
それまで経験したことないくらい自由な学生生活が送れるじゃん?
正直結論的になに話してるかわからない講義だったり、つまらなくてお金かけてる意味を疑うような授業も沢山あったけど。
でも洋画で出てきたようなバカでかい教室とか、ちゃんと聞いてる生徒がいたりいなかったりしてる教室の風景とかそれこそロマン…思い描いてた大学の理想の景色だったんだよね。
あきら:あ、風景として楽しんでたんだ。
ひろし:雰囲気風景も好きだし、国境超えていろんな人と話すのも好きでさ。
留学生が多いってのが一番大学入った動機になったんだよね。性格もいろんなやついたし(笑)
まぁ、2年からはコロナでほぼ学校行かずオンライン授業になっちゃったけど。
あきら:そうだったね。私たちも実は直接会ったこと数回??しかないもんね。
ひろし:んな。交流が一気になくなっちまったよな。
2020年の二年生だった時もう大学辞めて、専門に行かせてくれって両親に頼みこんで喧嘩した時期もあったもん。
あきら:あの時期、学校辞める人も多かったね。でも辞めなかったんだ。
ひろし:そ。大学卒業は親父にとっては大事だったらしくてさ。
俺人と話してないと鬱になりそうだったからオンライン授業でも、Zoomのアイコンを趣味の写真にしたりして会話のきっかけ作る工夫はしてたんよ一応。
あきら:おおお。オンライン授業を受ける生徒の鏡だね。
ひろし:意外とそれで友達増えてさ、ご飯行ったりコロナの関係ない山の中遊び行ったりできたの。
あきら:めっちゃ楽しんでるじゃん。
ひろし:結局は自分の人生だからやれることはどんどん挑戦した方がいいなと思って(笑)何歳になっても子ども心を忘れずに遊んだほうが最高に楽しいのよ。
こんなこと言うとナルシストみたいだけどさ、「俺の推しは全力で何かやって楽しんでるオレ」なんだよね。見た目とか見栄とかじゃなくて人生楽しんでるか楽しんでないかが大事なんよな。
あきら:常に挑戦して人生を楽しみ続ける大人か。なんかそれ、いいね。
ひろしが帰った後、いつまでもママたちを恋しがり、くよくよしてばかりではいけない。
今を楽しむんだ!!と決心したあきらなのでした♪
6月号おしまい