最終回
ほどほどに汚い森。それがスナック!
お客様:新ママ:桒田(くわた)晶さん
あちこちで、桜が開花する中入学式が行われ、コロナ禍の終焉を感じるわあと思ったら、あっという間に新緑の季節となった。スナックまきこにも大きな動きが訪れた。今夜は西ママが赤ワイン、東ママがスコッチのスモーキーなやつを飲みながら、ある人物が店にやってくるのを待っていた。
から〜んと熊除け鈴が鳴り、若い女性が現れた。
くわた:お待たせしました。
ママ✖️2:待ってました!!
3月に店を訪れてくれたくわたさんだ。
東ママ:まずは乾杯ね。何をお飲みになる?
くわた:サングリア、お願いします。
西ママ:サングリアなんてお洒落なお酒が、このスナックに登場するなんて!
東ママ:いつもオッサンの飲み物しかない店なのに!
3人は乾杯した。…何に?
西ママ:よくぞ、この店を引き継ぐ決心をしてくれました!
東ママ:ありがとう、くわたさん!
とうとう来たのである。ママの世代交代が。
くわた:とても緊張しています。大丈夫かな。
東ママ:緊張しないでくださいよ、大丈夫、大丈夫。私たちでもできたんだから。
西ママ:くわたさんは、確かミレニアムベイビーだったわね。
くわた:はい、2000年生まれです。
くわたさんは23歳。20代のスナックのママが誕生するのである。
東ママ:このお店では、大人とは何かってことを考えるんだけど、改めて聞くわね。くわたさんはどんな大人になりたいのかな?
くわた:店に来てくださるいろいろな大人の方たちの話を聞いて、自分のモデルを探してみたいです。
にこやかに答えるくわたさん。笑顔がとっても眩しい!
東ママ:いろんな大人が来るわよ。やな感じの人とか。ほら、「老害」って言葉あるじゃない。
東ママは、ちょっと意地悪く言ってみる。でも意地悪で言ってるんじゃない。自分もたくさん苦い経験があるから、くわたさんのことを心配しているのである。
西ママ:あのさ、松茸は綺麗なところに生えないんだって。
ん? と顔を見合わす東ママとくわたさん。
西ママ:アナ・チンが書いてる「マツタケ」って本にね、松茸はフィンランドの美しい山とかには生えない、荒廃したほどほどに汚い森でしかダメなんだって書いてあった。
東ママ:へえ、そうなんだ。汚れている場所でしか成長しないんだ。
西ママ:異分子の混入があったり、菌だらけだったり。
東ママ:老害のあるところに人間も育つってわけね。
西ママ:攻撃とかされて強くなるのよ。害があるからこそ、実りがあるのよ。松茸なんていらんとか言われちゃったら身も蓋もないけどさー。
くわたさんは二人の熟女の話に、静かに耳を傾けていたが、不意に口を開いた。
くわた:受け入れるんですね、考えすぎずに。害を排除しないで。
ママ✖️2:そうね〜。
西ママ:スナックって、いろんな人が良い空間を作っていくのが醍醐味なのよね。
東ママ:うん、いろんな菌が集まるところよね。
西ママ:荒廃したほどほどに汚い森みたくね。
東ママ:歳をとるってどうよ、西ママ?
西ママ:老化は避けられないよね。でもね、肉体は衰えるけどね、精神は成長するってことあるわね。
東ママ:私もまだまだひよっこだな。スキー場に行けば90歳のインストラクターとかいるもんね。肉体は衰えても、指導はできるのよね。
しばし、黙り込む3人。
東ママ:さてと。西ママはこの店引退したらどうするの?
西ママ:韓ドラ見まくる。東ママは?
東ママ:旅に出る。
くわた:わたし、がんばります!
ママ✖️2:応援してるね!
2年以上続いたダブルマキコのバーチャルスナック。時々バーが混ざったけど、「大人エレベーター」が全22回、若者が登場する「大人へのエレベーター」が全8回。
ご来店いただいたインタビューイーの皆様、誠にありがとうございました。そして、スナックネタを覗きに来てくださった読者の皆様、長らくのお付き合いありがとうございました!今後はうら若き、「あきらママ」がスナックを切り盛りします。乞うご期待! たまにマキコママもお邪魔します♪
チャオ!!
(了)