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第22回

スナックマキコの忘年会

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いろいろあった2022年。物騒なことや残念なことが多かったような…。コロナ騒ぎも終わらず、なんとも「平和」が遠く感じられる一年だった。

東ママ:今年も一年、スナックまきこ、お疲れ様でした。
西ママ:お疲れ様。かんぱーい。

大晦日。スナックまきこでは、西ママと東ママがいく年を振り返り、熱燗をくいっとやりながら地味な忘年会をしている。今夜はどうしたことか、もうそろそろ除夜の鐘も聞こえてくる時間なのに、一人も客がやって来ない。

西ママ:2022年。東ママはどんな一年だった?
東ママ:漢字一文字にすると「縁」。
西ママ:そのココロは?
東ママ:仕事でも地域でもいろーんな新しいご縁ができたからねえ、お店にも本当にいろんな背景を持つお客様、いろんな世代のお客様が来てくださったから。
西ママ:私は「省」かな。
東ママ:むむ。そのココロは?
西ママ:これまでの人生、仕事と子育てと飲み会に追われてたんだけど、コロナをきっかけに外に出かけない生活の良さに目覚めたんだよね。だけど、1ヶ月に4種類の病院に通うほど体調崩しちゃって。毎日痛み止め薬を飲むようになって、これはやばいな、と。で、パーソナルトレーニングに通い出したら、体調改善! 体のことも、人生のこともいろいろと振り返ったわけよ。
東ママ:ほほう。「かえりみる」の「省」か。そういえば、私も今年から地域で太極拳始めたよ。難しくって全然ついていけないんだけど、先輩たちがすんごく優しくて素敵なんだよねえ。効果はまだ見えてないけど、心は確実に元気になってる。座右の銘が「根性」だったけど、もうそんなのじゃ乗り切れないね。
西ママ:もう無理ね。
東ママ:今の口癖は「大したことない」。何かパニクりそうになると、そう自分に言い聞かせる。
西ママ:いいね。私も頑張るのをやめたわ。

チーーーン。

二人のママが同時にエレベーターに目を向ける。

古屋:こんばんは〜

西ママ・東ママ:いらっしゃい!
西ママ:今、二人で、自分にとっての「今年の漢字」を考えてたのよ。

古屋:えーっと、漢字じゃなくても大丈夫?

 古屋さんはスナックまきこに時々顔を出す。ホット烏龍茶を啜りながら、自らの一年について語り出した。

古屋:僕は、あえて不自由なことをやっています。
東ママ:「あえて」と「不自由」が気になる。
古屋:例えば、これまでPCはwindows使ってたのに、新しいの買うときMac選んだり。操作が違うし、最初イライラするやないですか。いまだに混乱することあるけど、だんだん慣れてくると、Macは「こうなんや」っていう気づきもあって、それがおもろい。今は両方つこてます。
西ママ:私も常にMacとWindows両方使ってる。
東ママ:二人とも二刀流か。ショーヘイ・オータニだなあ。私、Macしかもう無理。
古屋:それとか、僕は今までろう者と接したことなかったから配慮について全然知らなんだし、考えたこともなかったんやけど、学会の仕事で、発表資料に字幕を入れるとか、手話通訳がやりやすいようにあんまり早く話したらあかんとか、発言する時は手をあげて自分の名前を告げて話すとか、いろいろ細かい配慮が必要なことを知ったんです。こういうのって慣れないとめちゃ不自由で、大変やったんやけど、やっているうちにこういう制約がある中でどしたらいいか考えるのもおもろいなあって思ったんです。新しい発想って、制約の中で生まれるんですね。
西ママ・東ママ:へえ〜。
古屋:あと、中国語の発音トレーニング、改めてやってて、口の形とか舌の位置とか、意識しなあかんポイントがいろいろあることを再発見しました。
西ママ:なんで、中国語を学び直してるの?
古屋:ぶっちゃけ、明確な目的はありません。僕にとっては中国語は努力の象徴みたいなもん。僕はあまり努力をしたことなくて、唯一、自分なりに努力して身につけたのが中国語。身につけるプロセスで、不自由を感じるんで、あの時の不自由さを追体験しつつ、自分が少しでもよくなっていく感覚を得たいというのが学び直しの動機です。
東ママ:それ、私の場合、スキーだな。ずーっと我流でやってて変な癖がいっぱいついてしまい、めちゃくちゃな滑りしてたから怪我もしたし。今、毎シーズン合宿スタイルでスキーを学び直してます。
古屋:不自由な状態から自由に動ける状態への変化を楽しむという意味では、スポーツと外国語学習は似てますね。
東ママ:スナックを引退したら、スキーをやったことのない子どもたちにスキー教えたいんだよね〜
西ママ:私はいつか、ブックカフェ兼子ども食堂やりたいな。
東ママ:いいね〜。子ども食堂にきてる子たちにスキー教えたいと思ってた。スキーをやる、やらないには経済的格差が背景にあるから。
西ママ:いいね〜。私も子ども食堂にやって来る子どもと美術館や博物館めぐりや山登りがしたいわあ。

その時、ゴーン……ゴーンと除夜の鐘が鳴り始めた。

東ママ:2023年がやってくる! さて、まとめますよ〜。2022年、自分がちょっと大人になったな、と思うことは? 私は、「こんなの宇宙の大きさに比べたら、瑣末なことさ」と思えるようになったこと。
古屋:得意技に頼りすぎないようにしようと思うようになったこと。
西ママ:いろんなことに耳を傾けるようになったこと。
古屋:自然にやっていたことを意識してするようになるってことも、大人になるってことかな。

ゴーン……ゴーン。ゆく年、くる年。

読者の皆様!!
この一年、「スナックまきこ」に訪れてくださり本当にありがとうございました!!
来年も、熟した大人やこれから大人の階段を登っていくピチピチの大人をお客様に迎え、「大人」、いや「生きる」って楽しい!って思える会話をお届けしたいと思います。
新しい年が、皆様にとって笑顔あふれる平和な一年でありますように♪

 2022年の「スナックまきこ」、閉店で〜す! カラ〜ン。

(了)

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