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しんちゃんの教師物語(番外編)

しんちゃんは、少し前にアメリカ横断鉄道旅行をし、今それについてものすごく書きたい気持ちがいっぱい。

論文もエッセーも書きたいときが旬!なので、今回は番外編でそれを書いちゃいます。

しんちゃんは、渡米以来、車か鉄道でアメリカ大陸を東西に横断するのが夢でした。

でも、そんなこんなでかれこれ30年近くも経ち、いつか…なんて言っているといつまでたっても実現しないとも思い始め、

思い立ったが吉日!アムトラックのスケジュールを見てみると、なんと3泊4日あれば、

ニューヨークからサンフランシスコまでシカゴ乗り換えで大陸横断可能だということがわかりました。

この旅の計画を立てるにあたり、しんちゃんは電車旅行をしたことのある友人、何人かにアドバイスをもらいました。

景色がきれいなのはデンバーからサンフランシスコのロッキー山脈と

シエラネバダ(ビールの名前だと思ってました(笑)!)あたりだから、

デンバーまで飛行機で行ってアムトラックに乗ればいいよというアドバイスがほとんど。

あとは、オハイオからデンバーまでは寝ても覚めても平らだからつまんないよ〜とか…

でも、今回の旅の目的はきれいなところを見るだけではなくて、アメリカがいかに大きいかを肌で感じること、

そして、そこに住む地形や自然や人を感じたいと思っていたので、

しんちゃんは、あえてニューヨークからサンフランシスコまで通して旅することにしました。


しかし、一番面白かったのは車内で出会った人たちです。

この旅行では寝台車に乗っている人たちには三食がつき、食堂車で食事ができるのですが、

毎回違う人たちとテーブルに座らされます(笑)。

全く共通点もなさそうな人たちと大丈夫かな?と思わなくもありませんでしたが、

そこでの会話はまるで小説を読んでいるかのようでした!

80歳の誕生日に孫娘とスカイダイビングをした写真を見せ、

楽しいからあなたたちもやってみると良いわよと笑顔で語ってくれた女性には、同じテーブルに座っていた3人も仰天!

色々話しだすとなんのその、テーブルの他の2人は退職した判事とご医学部の学生でした。

その学生とは何度か食事を一緒にしましたが、

これから病院でインターンをするのでその前にアメリカを見ておきたいとのことでした。

両親がハイチからの移民ででもハイチにも他の外国にも行ったことはないそう。

優しそうな彼はきっといいお医者さんになるんじゃないかなとか考えながら話を聞いていました。

アムトラックの車内には天井がガラスなりの展望車があるのですが、そこでひたすら絵を描いている青年がいました。

あまりにも上手なので描くのを眺めていてもいいかと許可を得て1時間ほど彼が絵を上手に描くのをぼーっと眺めていました。

なんと贅沢な時間!​

アラバマのバーミンガムから来たという年配の男性と食事を同席した時には、

しんちゃんは何か彼と共通点があるのかなあと思っていましたが、

色々話しているうちに彼のお孫さんがアイオワ大学で日本語を4年勉強していたことが発覚!

ものすごく優しそうでオープンなその80歳ぐらいの男性の人柄と話術にしんちゃんはあっという間に惹き込まれていました。

ランチで一緒に座ったご夫妻はなんとニュージャージー出身で、

先月プリンストンのアグリコラというレストランに行ったよとのこと。

しんちゃんも時々行くレストランでなんと狭い世界!!!

スイスから来た証券マンの彼はどのアメリカ人よりもアメリカの国立公園についてよく知っていました。

ケルンから友人の結婚式のためにアメリカに来た青年、

タイに住んでいてアメリカ鉄道横断が夢だったという日本人など

(彼もニューヨークから乗ってきたそうで、ニューヨークのラウンジであなたを見かけましたと…)。

アメリカで5月の中旬に電車の乗客の3分の一ぐらいは一人旅、3分の一ぐらいはアメリカ国外から来た人のようでした。

ネバダ州に入ったのは朝日と共に。荒野を一本の太いハイウェーが走っています。

この道はどこに行くんだろう。そんなことを考えただけでもわくわくします。



その後しばらくしてネバダ出身の車掌さんが「もうすぐ歌の題材になった有名なガソリンスタンドが見えるよ。

今は使われていないけど…」と。そのガソリンスタンドは本当に何もない砂漠の真ん中の交差点にポツンと立っていました。

聞かなかったら完全に見過ごしてしまうようなちっぽけな建物。

旅では語りたい人が語りたいことを語りたいだけ話し、聞きたい人はその語りを聞く。

名前さえも必要ない。

そして、その人が自分について語られなければその人がどういう経験をし、

どういう人生を送っているのかは(見ただけではほとんど)わからない。

しんちゃんはふと思いました、彼らが語っているのは本当のことなのだろうか?

本当のことを語っているかどうかということはそんなに重要なのか。

大切なのはしんちゃんはとにかくその語りを楽しんでいたということ。​

同じ電車に乗って、同じ食事をし、同じ景色を見て、同じ空気を吸っていると自然に何か親近感のようなものが生まれてきます。その親近感を得るにはある程度も時間が必要な気がします。

シカゴからサンフランシスコまではたった2泊3日でしたが、

カリフォルニアで駅につくたびに、何人かずつ列車から降りていく名前も知らない語りあった旅人たちを見て、

何か寂しさを覚えたのはしんちゃんだけではないはず。

そのときしんちゃんはふと、それは教室と似ているなと思いました。

ふとした偶然で同じ列車に乗り合わせ、コースが終われば、卒業すれば、駅を降りていく旅人たちとの関係は泡のようなもの。

しんちゃんのクラスの中にいる学習者は以前にもまして多様になってきていると日々感じていました。

でも、今回の旅で感じたのは、(当たり前ですが)世界はもっと多様だということ。

今回の旅で出会った人たちは年齢的にも経験的にも本当に多様な方達でした。

しかし、経済的に、時間的にに恵まれている、

この時代にわざわざ時間をかけて列車で旅をしてみようという価値観を持っているという点では似ているのかもしれません。

でも、改めて多様性ってなんでしょうね。

そもそも、みんな違うのだからどこに行っても多様なはず。

でもみんな人間、あるいは、生き物という点では同じですし…

(編集後記)
しんちゃんって「ふと思う」ことが多いですね。読み返して気づきました(笑)

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