top of page
5.png

しんちゃんの教師物語(10

 

しんちゃんは、サラリーマンになって2年目の夏、タイとフィリピンへの旅に出かけます。

タイはボランティアセンターでいっしょに勉強していたタイ出身のユタさんの国を見てみたいと思ったから

(この旅はまたの機会に書きますね!)、フィリピンはペンパルのホワンを尋ねるためでした。

しんちゃんがホワンとどうして知り合いになったのか…それはその1年前のヨーロッパの旅の話から始めなければなりません。

しんちゃんがフィリピン旅行に出かける一年前にスペインでインターンシップをしていた大学時代の友人を訪ね、

スペインのビルバオという町に行きました。

初のヨーロッパ旅行です!しんちゃんは格安航空券を一生懸命探し

(ネットのない時代にどうやって探したのかもう覚えていません!)

クアラルンプール乗り換えドバイを経由フランクフルト着というマレーシア航空の格安チケットを探し当てました。

この旅行は、フランクフルト到着後、パリ経由で電車でビルバオに向かうという計画でした。

トーマスクックの時刻表(懐かし〜。もちろん紙の冊子です)を調べ、

到着日と時間、そして、ビルバオ駅で会おうねと書いた手紙をビルバオにいる友人に手紙で送り、いざ出発!

ところが、フランスからスペインの国境を越えるときにしんちゃんはある事実に気づきました。

電車はフランスの国境を越えたスペインのイルンというところまでで、そこからはバスだったのです。

トーマスクックの時刻表をよく見てみると電車ではなくバスのマークが書いてありました。

あれー。

その後、バスはほぼ時間通りにビルバオ駅の近くのバスターミナルに着き、

あわてて人に聞いて徒歩圏内のビルバオ駅まで行きました。

(今でもそのときに持っていた会話本で覚え使った¿Dónde está la estación?は一生忘れないフレーズです)

しかし、待てども待てども友人は現れません。

そのときしんちゃんは友人に送った手紙の住所しか持っておらず、友人の電話番号も知らないことに気づきました。

今ならGoogle Mapなどで住所を検索しそこまで行けばいいのですが、当時はネットも携帯もない時代。

途方に暮れて、あーどうしようと。

(でも、しんちゃんは正直そんなに焦っていなかった。なぜかな?)

2時間ぐらい待っていると友人が突如現れました!

この話は、バスで到着したという意外な展開以外に、実はもう一つのハプニングがありました。

ビルバオには駅が2つあったのです。

しんちゃんの手紙を受け取った友人はビルバオ駅に待ち合わせの時間にしんちゃんを迎えに来てくれました。

かし、まったくしんちゃんが現れないので不思議に思い、

もしかしたら駅が二つあるのではと近くの人に聞いてくれたそうです。

そして、慌ててもう一つの駅に来てくれ、しんちゃんと会うことができたというわけです。

今ならこんな綱わたりのような旅、絶対しませんが、その時はどうしてできたのだろうかと思います。

今は携帯で何もかにもが調べられ、人とコミュニケーションしなくても、いとも簡単に海外旅行をすることができます。

地図アプリを使えば目的地への行き方や所要時間、交通手段の選択肢や値段までが瞬時にわかります。

タクシーもアプリを使えば運転手と会話することも、現金でお金を払うこともなく目的地に行けます。

買い物もクレジットカードで支払えば現地の通過さえも必要なく、

市場でどうしても会話しなければならないような時は翻訳機の音声機能を使って、

また、看板も写真を撮れば翻訳が自動的に出るようになっています。

しんちゃんは旅行中、気づけばだれよりも携帯と向き合っている時間が多くなっている気がします。

ネットや携帯が普及することで、しんちゃんの中に起こった確実な変化は(年齢もあるのでしょうが)不確実な事柄に対して、

以前よりも容認度が低くなったのではないかということです。

つまり、「わからないこと=楽しい」よりも「わからないこと=不安」のほうがまさってきているのではないかということです。

世の中も人生も、時代は変わっても、いつも不確定なことばかりです。

たしかに、目的地や外国語での買い物は携帯のアプリやネットが事細かく教えてくれるかもしれません。

でも、自分がどういう人になりたくて、そして、どう生きていくかは、

携帯やネットは(少なくとも今は!)教えてはくれないのです。

でも、旅(それは外国語を習うというような比喩的な旅も含めて)は、携帯のアプリやネットを多用したとしても、

非日常の中でさまざまな人々や価値観に出会うことで、自分がどういう人になりたいのか、

自分がどう生きたいのかを考えさせてくれる貴重な場を提供してくれていると思います。

しんちゃんは何年日本語を教えていても、いつも学習者と旅をしているような気分にさせられます。楽しい!

あれー、フィリピン旅行の話をするはずだったのにヨーロッパ旅行の話にすり替わってますね。

ホワンと会ったのは、そのヨーロッパ旅行の帰りの飛行機の中でしたが、その話とフィリピン旅行の話はまた次回!

​                                                              づく 

(執筆後記)

先月カンボジアのアンコールワットに行ってきて、クメール文字に触れてわくわくしました。

「こんにちは」はសួស្ដីと書くようです。

bottom of page