
ひつじのおにく
8皿目
優しさってなんだろう
前回は、南インドカレー屋で先輩の灰野さんとひつじ料理を堪能した白石と黒崎。今回は、二人で羊肉が売りの中華料理屋に来てみました。
白石:遅れてごめんね~!もう注文した?
黒崎:いえいえお疲れ様です〜!あ、よだれラムと飲み物だけ、先に頼んじゃいました!
白石:ありがとう!ナイス!私も飲み物頼んじゃお。
・・・・よだれラムをつまみに、ハイボールとトマトハイで乾杯!・・・・・・・・
白石:よだれラム大正解すぎる!このトマトハイ、羊肉串とかにかけるスパイス入ってて超羊。
黒崎:この辛味とラムの旨みがたまらんですね!……モグモグシビシビ……そういえば、白石さんは最近お仕事どうですか?
白石:いや~今日さ~。出席が足りてない学生に交渉されちゃって・・・どうにかなりませんか?って。
黒崎:交渉かぁ。よくありますよね。
白石:なんかねー、たぶん私、やさしそうって思われてると思うんだよね。でも実はけっこうドライだし、え、無理だよ~みたいな感じでさ。
黒崎:まあ、そうなりますよね。こちらではどんな事情や感情があったとしても、なんも出来ないし……。
白石:そうそう。なんか、はじめからちゃんと厳しそうなほうが、むしろやさしいのでは?って思っちゃった。白石先生全然怒らないし、やさしいからきっと欠席しても単位なんとかしてくれる、って思わせちゃうのはむしろ残酷なのかも。
黒崎:私もスタンスとしては白石さんと同じなので、そう思うこと結構あります。学生から優しいと言われますが、優しいというより、都合が良いと思われてるんじゃないか。熱心にあれこれ指導する厳しくて口うるさい先生の方が、実のところ学生にとって優しい先生なんじゃないかって。
白石:すっごいわかる。そういう先生って、愛があるというか、ちゃんと関心寄せてるからこその厳しさだったりするしね。実際、「あの先生はやさしい」っていう評価も、良い意味とは限らない気がする。
・・・・・ラムパクチー炒飯とネック(串)で狭いテーブルが埋まる・・・・・・・
白石:ラムの炒飯初めて食べたけど天才的なおいしさ。作ってるところ見ながら食べるのサイコー。
黒崎:こんな風貌の店のチャーハン、当たりの予感しかしませんでしたが、しっっかりアタリです!
白石:うんうんうん。ネックもおいしい。羊の串、大好き!
黒崎:……ワシワシモグモグ……そういえば、さっきの話に戻っちゃうんですが、そもそも、私「優しい」って言葉、あんまり好きじゃないんですよねぇ。学生にもよく言われますし、人生の中でも言われる数は多い方だと思ってますが、言われる私としては反応に困るというか……。
白石:えーそうなんだ。なんでなのかな。黒ちゃん的に、やさしい人ってどういうイメ―ジ?
黒崎:誰かのために何かをしたり、心を動かしたり…献身的なイメージですかね?実際、私はドライなタイプなので、優しいと言われても「それって都合が良いの裏返しでは?」と思ってしまったり。
白石:なるほど・・・。じゃあ逆に、あの人やさしいな~って思う相手ってどんな人?ほかの人に対しても、ネガティブな意味でやさしいな~って思う?
黒崎:なんでしょう。あんまり相手に優しいと思ったこともないんですが、クラスのグループワークでメンバーを手助けしている学生を見て、「なんて優しいんだ!」と思ったことはあります!でもネガティブな意味ではないですね。
白石:そうだよね。それは良い意味だよね~。あ、これは本当に悪い意味じゃなくて、黒ちゃん、さっき私が遅れてきたのに、いいですよ~って迎えてくれて、やさしいな~って思ったよ。本当に悪い意味じゃない。
黒崎:あ、全然大丈夫ですよ!なるほどなるほど。
白石:あ!でもこれって、怒られなかったとか、許された~とか、つまり都合が良いってことなのかな!?
黒崎:そういうことかもしれませんね。……でも、ちょっと遅刻しちゃったとか、間違えちゃったとかでプリプリ怒っている人は嬉しくないというか……許しとか受け入れの姿勢って誰にでもあって欲しいものっちゃものですよねぇ。
白石:たしかに・・・やさしい人の反対ってなんだろうって考えたんだけど、厳しい人もやさしい側面があるし、怖い人とか、いじわるな人とか、冷たい人とか・・・?
黒崎:塩とか…………?対になりそうな言葉、どれもしっくりこないですね。
白石:やさしさって、誰もが持っててほしい社会性みたいな・・・。相手の受け入れ姿勢がないと、コミュニケーションって途端に難しくなるもんね。
黒崎:少なくとも、優しいと言ってくれる人は、少なくとも自分に警戒心を解いてくれてるってことですもんね。
・・・・隙を見て頼んだ茹で羊足、発酵白菜とラムの炒めが来る。うますぎる。・・・・
黒崎:茹で羊足、初めて食べましたが、口がコーティングされる感じというか、たっぷりのコラーゲンを感じますね。美味しい美味しい……。
白石:この白菜もおいしい。ラムの味が染み込んでておいしい。
黒崎:白石さんも、なんとなく私の個人の考えですが、優しいと言われることが多そうな気がするんですが、言われた時どう感じられます?
白石:素直に受け取れる時もあれば、内心「甘くないぞ!」って思うこともあるかも・・・。自分に向くと微妙なのはなんでなんだろう。
黒崎:うーん…。私が「優しい」と評価された時に、微妙な気持ちになるのって、「優しい」という言葉に具体性がないところも理由としてはあったんですよね。今までの話から考えると、「優しさ」って望まれる社会性があるってことだから何も評価されてないって感じて納得できなかったんですかねぇ。
白石:なるほど!何かしたときに「あの人はやさしい」って思うのは、何かその社会性が発揮された感じがするけど、「あの人はやさしいです」って評価されるのは、実は何も言ってないのと一緒ってことなのかな。
黒崎:そうですねぇ。
白石:あっ、でも、やさしさが社会性だとしたら、何かしたときの「やさしさ」も、場所とか世代によって違ったりするのかもね。「余計な事した」とか「冷たい」とか評価される「やさしさ」もあるかもしれない。
黒崎:服屋で店員さんが色々と話しかけてくれるのも1つの優しさですし、逆に話しかけずにそっとしてくれるのも優しいですよね。
白石:みんなそれぞれにやさしさがあるんだねきっと。やさしいねって言われると複雑な気持ちだけど、やさしくはありたいよね。
今日のシメ
「やさしさ」って、みんなが持ってる社会性のことだったりする?
相手を受け入れる態勢があって、それが相手にも伝わっている……?うーん。いやいや、やっぱり意外と、一筋縄じゃいかない言葉なのかも。
だけど、誰だって優しくありたいと思うし、誰にだって優しさを持ってほしいものだね。
今回、白石と黒崎は香辛料が効いた羊料理を堪能しました。
白石の仕事での気づきの話から、「やさしさ」とは何か語り合いました。
議論の末、二人は「やさしさ」という言葉の持つ多面性に気づきました。
みなさんが誰かを「やさしい」と思うときは、どんな時ですか?誰かに「やさしい」と言われたら、どう受け取りますか?