
ひつじのおにく
4皿目
働くってなんだろう
黒崎が大学院を修了して以来、半年ほど会えていなかった白石と黒崎。久しぶりにひつじを食べようということで仕事の合間をぬって集まりました。今回は、ひつじ肉が使われているアラブの軽食を食べてみることにしました。
黒崎:白石さん、お久しぶりです〜!
白石:久しぶり〜!半年ぶりかな?元気だった?
黒崎:仕事を始めて毎日大変ですが、楽しくって・・・!体力的にはきついですが、精神的には元気です!
白石:そっかそっか。大変そうだけど、楽しいならよかったよ!とりあえず先に注文しちゃおっか。ここって、アラブ料理だよね・・・?知らないものばかりだ・・・!
黒崎:ファラフェルは聞いたことがありますが・・・コシャリ・・・・・・?
白石:コシャリって何だろね?でもラムのせがあるから、それ頼もうか。
黒崎:わーい!
・・・・・店員さんを呼んで、注文する・・・・
白石:仕事はどう?順調?
黒崎:教師業ということもあって、勤務時間外にも授業の準備とかで忙しいですね・・・でも、精神的には全然苦痛じゃなくて、むしろ楽しいぐらいです!
白石:そっか、時間外に準備してるのかぁ・・・それって学校的にOKなの?
黒崎:うーん、私もですが結構プライベートと仕事が繋がっちゃいがちな先生が職場に多くて、あまり問題にはならないですね。たぶん社会のルールとしてはアウトすれすれだと思います。
白石:なるほどー。今は学校も時間外労働に厳しくなってきてるはずだけど、そういう雰囲気の学校もきっとまだまだあるんだろうねー。黒ちゃんは楽しめてるみたいだからよかったけど・・・授業準備してるときって、意識的には働いてるって感じするの?
黒崎:はい!!!家に帰って授業準備すると、突然「わー家で仕事したくないよおーーー!」ってなってるので、多分仕事だとは思ってますね。なので、家じゃなくてカフェで仕事してるんですよ、お金使って。
白石:それは・・・えっと・・・黒ちゃん的に、ありなの?
黒崎:たまにお金稼ぐために働いてるのに、働くためにお金使ってるぞ・・・?と不思議な気持ちになります笑
白石:そうだよねぇ。私が働いてたところは、勤務時間内に授業準備できてて、残業多いときは時は収入も増えたんだけど、働く時間が長くなることでお金の浪費も増えるからさー。ふと、これってプラマイゼロ、むしろマイナスでは?ってなったことある。
黒崎:そうなんですよね、「働く=お金稼ぎ」という漠然としたイメージが就職前はありましたが、働いてみると、意外とそうじゃないんだなーって感じですね。
白石:私はお金ほしいけどなー。
黒崎:いやほんと、働いたらお金は欲しいっす・・・。「みんな何のために働いてるのーーー!?」って地球上の人に聞いてまわりたいです。「働く」って何なんでしょうね?
白石:もしさ、とんでもない額の宝くじが当たったら、仕事辞める?それとも働き続ける?
黒崎:仕事がないと無の時間が増えすぎて、生きるしかばねみたいになりそうです。食べて歩いて寝ての繰り返しでずっとぼーっとしている・・・みたいな。なので働きますね。
白石:まじか!じゃあほんとにお金が問題じゃないんだね。
黒崎:連休とかもだんだん最終日になるにつれて鬱々としちゃって、連休最終日は「やっと仕事が始まる」ってほっとする自分もいたりするんです笑
白石:えぇ・・・信じられない・・・
黒崎:白崎さんは巨万の富を得たら、仕事やめちゃいますか?
白石:辞めるね。働かなくていいなら働きたくないよ。
・・・ファラフェルが届く。コシャリも届く。・・・
白石:わあ!なんだこれー。何なのか全然わかんないけど、どっちもおいしそう!
黒崎:コシャリは見た目はラザニアっぽいですけど、よく見るとコメもペンネも短いスパゲッティ的なのも入ってますね。ファラフェルは何だかコロコロしてて可愛いですね。
白石:うんうん・・・あ、おいしい!ファラフェルはなんだろ、豆のコロッケみたいな?歯応えあっていいね!
黒崎:ホクホクをイメージしてましたが、どっちかというとプチプチしてますね。コシャリはスパイシーで美味しいです!
白石:なんでコメとペンネとスパゲッティが入ってるんだろ・・・でもきっと意味があるんだよね・・・。
黒崎:ちょっと日本人の私にはわかりませんが、現地のアラブの人なら、それぞれの具材の仕事がわかるのかもしれないですね。
白石:そうだねー。ねぇさっきさ、お金があっても働きたいって言ってたじゃん。生きてるだけで、家で料理したり家事したり、あと遊びに行ったり、やれることはいっぱいあるけど、それじゃ物足りないって感じ?
黒崎:あっ・・・たしかに。家事はカウントしてませんでしたね。「仕事」としては認識していませんでした。どちらかというと「作業」に近くて苦手かもです。
白石:作業は嫌だけど、仕事は好き、ってこと?
黒崎:言われてみるとそうですね。え、「作業」と「仕事」ってなにが違うんでしょう。
白石:うーん。作業と仕事の違いかはわかんないけど、なんか仕事だと、必ず他の人との関わりがある感じじゃない?個人でやる仕事でも、クライアントがいたり、成果が何かしらの形で他の人に影響するよね。
黒崎:たしかに。家事のときは、その行為の結果は自分にしか還元されないし、己との戦いっていう感覚があります。でも、「働く」っていう行為をしているときは、関わる人の顔とか反応が浮かぶので楽しい感じがします。
白石:誰かに貢献できるっていうのがいいのかな?
黒崎:貢献というよりも・・・少し自分勝手な感覚ではありますが、「仕事を通して相対的に自分の役割とか存在が感じられて、それがポジティブな感情につながっている」という方が感覚として近いですかね?
白石:あー、それは共感できるかも。集団の中にいるからこそ役割があって働きがあるというか・・・。え、例えば、このコシャリの中のペンネも、1つのペンネだとただのペンネだけど、コシャリの中で役割があって、何かしらの働きがあるもんね!?
黒崎:そうですね。同じ味、栄養素だったとしても、どんな料理と組み合わせられるかによって、その食べ物の働きは変わりますもんね。このコシャリのペンネも、このお皿の中でなにかしらの役割が与えられてるんでしょうね。
白石:私も、働かなくていいなら働きたくないって言ったけど、人との繋がりは断たれたくないし、大金持ちになったとしても、自分にできることがあるなら、なんやかんや働いちゃうかもしれないな。
黒崎:「働く」ことの本質ってお金を稼ぐとかじゃなくて、社会的な行動とそこから認識できる自分の役割意識なのかもしれませんね。
白石:そうなのかも。もらうべきお金はちゃんともらったほうがいいけどね。
黒崎:はい!気をつけます!
今日のシメ
同じタスクをこなしていても、自分のためにすることは「作業」になるけど、相手がいると「働く」っていう意識になる気がする。
いろんな人がいる中でそれぞれが「働く」と、相対的に自分の役割ができるのかな。「働く」って、他者がいるからこそできる社会的な行為なのかも?
今回、白石と黒崎はアラブ料理屋さんでラム肉が乗ったコシャリと、ファラフェルという料理を堪能しました。
大学院を修了して働き始めた黒崎の話から、「働く」とは何かについて語り合いました。議論の末、二人は「働く」ことによるお金を稼ぐ以外の意義を確認したのでした。
みなさんにとって、「働く」ことにはどんな意義がありますか?大金持ちになったとしても、働きますか?

