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ひつじのおにく 1皿目

​ひつじのおにく

普通ってなんだろう

東京都内某日某所、大学院の先輩後輩である白石と黒崎は、お互いにラム肉を食べることが好きだということで意気投合。二人は、某弁当チェーン店で期間限定のジンギスカン弁当が販売されていると聞き、一緒に食べることにしました。

黒崎:数量限定と聞いていましたが、買えましたねぇ〜。これがジンギスカン弁当ですか。ジンギスカンというと、お店で食べるイメージですが…。
白石:買えてよかったよ。でも、お弁当のジンギスカンっておいしいのかなぁ。あんまり期待しすぎないようにしたいよね。
黒崎:そ、そうですよね!北海道で食べた絶品ラムチョップのことは一旦忘れとこうかな。

・・・・・お弁当を開ける・・・・・

白石:じゃあ早速、いただきます!…うん、普通においしい!
黒崎:あ、ほんとだ、普通においしいですねぇ。…あれ?普通においしい?
白石:どうしたの?
黒崎:普通においしいって、どのくらいおいしいんでしょうか。なんか聞こえた感じ、あんまり「おいしい!」っていう感じはしませんよね。
白石:え、でもこれ、普通においしくない?
黒崎:そうなんですよね、普通においしいんですよね。うーん。普通ってなんでしょう。
白石:うーん、このお弁当の場合、あまり期待していなかったけど、その期待よりもおいしかったってことかも。おいしいの基準値に達したよ!って感じかな。
黒崎:私もそんな感じですかねぇ。自分が想定していた基準値よりも、超えていて、驚いたなぁ〜っていう感想として、「”普通に”おいしい」って使ったかもしれないです。
白石:私の基準と、クロちゃんの基準って、同じなのかなぁ。
黒崎:あ、たしかに。多分、シロさんよりもラム経験値は少ないので、基準低めかもしれないですね。
白石:なるほどね~。…あっ、やばい。普通にこぼした。
黒崎:あ〜〜ラムとたまねぎが……3秒ルールなので大丈夫ですよ!
白石:そうだね。大丈夫!というか今また私、”普通に”って言ってたね。
黒崎:思いました笑。この時の「普通」って基準ではない……ですよね?
白石:なんかちょっと違うよね。誰がどう見てもこぼしてる、明らかにこぼしてる、みたいな…?
黒崎:さっきの「普通」はシロさんと私で基準が違うねってなってましたけど、今回に関してはお互い目で見てわかる、文字通りの「こぼしてる」ですよね。
白石:共有できてる「普通」っていう感じなのかなぁ。

・・・・・もぐもぐ・・・・・

白石:…ちなみに、自分が作った料理を「普通においしい」って言われたら、なんか嫌じゃない?
黒崎:あ〜〜!嫌かも!!嫌です!
白石:だよね~。じゃあ、そのスマホケース、普通にかわいい!って言われるのは?
黒崎:あっ、それは、嬉しい…かもです。
白石:えっ。そうなの?嫌じゃない?
黒崎:そもそもこのスマホケース、少しユニークなデザインですし…。あと、私、あんまり自分のセンスに自信がないんですよね。シロさんのこと、おしゃれだな〜って思ってるので、おしゃれな人に太鼓判押されたみたいでうれしいです。
白石:え、なんか照れる。でもそっか、評価するときに使うと嫌な感じなのかなと思ったけど、そうとも限らないってことかぁ。さっき、「普通」の基準が人によって違うかもって言ってたけど、「普通」って表現から相手の基準が見えるってことなのかなぁ。
黒崎:確かに、ゼミの先生に「修論、普通に良かったよ」って言われたら安心しますけど、誰に言われるかによっては、言葉の受け取り方って変わりますね。
白石:おもしろいね。じゃあたとえば、後輩に「先輩の修論、普通に良かったですよ!」って言われたら?
黒崎:ちょっと修論の出来栄えが不安になるというか…。うーんと、相手が自分よりも論文読んでなさそうとか、研究進んでなさそうだったら、嬉しくないですね。
白石:先生はその道のプロで、今までたくさんの先輩方の修論を読んできているから、その中での「普通」ってことは、私の論文、結構いいんじゃない?って受け取れるってことなのかな。
黒崎:そうです!そうなんです!あ、もうジンギスカンないや。残りのご飯は付属のタレをかけて食べよっと。

・・・・・弁当片付け中・・・・・

黒崎:「普通」って誰にとっても当たり前で、変わらないものに使われる言葉というイメージでしたけれど、意外と人と場合によるんですね。
白石:そうだね。それに、自分の「普通」もきっと変わっていくものだよねー。昔の自分の「普通」と今の自分の「普通」って絶対同じじゃないもん。
黒崎:それこそ、今回のジンギスカン弁当を食べて、私たちの「ジンギスカンの普通」がちょっとゆらぎましたもんね。
白石:確かに!経験を積んでいくと、普通が更新されていくのかも。あ、ごみ、こっちにまとめちゃおうか。
黒崎:ありがとうございます!いやぁ、やっぱりラム、、、ひつじっておいしいですね。
白石:ね。一緒にもっといろんなひつじ料理食べたいね。
黒崎:私たちのひつじの「普通」、広げちゃいましょうか!

​今日のシメ

<p class="font_8" style="text-align: center">今日のシメ</p>
<p class="font_8">”普通”には2種類あるみたい。一つは動作や状態など、誰が見ても認識が変わらないもの。もう一つは個人の中にある基準。個人の基準は決して不変的ではなく、それぞれの経験によって変化し得る。そして、誰かと話しているときは相手の基準を想定するため、「普通」という言葉の受け取り方も違ってくるみたい…かも。</p>

今回、白石と黒崎は、某弁当チェーン店のジンギスカン弁当に挑戦しました。
白石の「普通においしい」という発言から「普通」とは何かについて語り合った白石と黒崎。議論の末、二人は自分たちのひつじの「普通」が更新されたということに気が付いたのでした。
「普通」とは何でしょうか。「普通」という言葉を使う時、みなさんは何を思い浮かべていますか?

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