top of page
見出しを追加 (7)_edited.png

最終回

ほどほどに汚い森。それがスナック!

 

お客様:新ママ:桒田(くわた)晶さん

makiko31.jpg

​ あちこちで、桜が開花する中入学式が行われ、コロナ禍の終焉を感じるわあと思ったら、あっという間に新緑の季節となった。スナックまきこにも大きな動きが訪れた。今夜は西ママが赤ワイン、東ママがスコッチのスモーキーなやつを飲みながら、ある人物が店にやってくるのを待っていた。

 から〜んと熊除け鈴が鳴り、若い女性が現れた。

 

くわた:お待たせしました。

ママ✖️2:待ってました!!

 

 3月に店を訪れてくれたくわたさんだ。

 

東ママ:まずは乾杯ね。何をお飲みになる?

くわた:サングリア、お願いします。

西ママ:サングリアなんてお洒落なお酒が、このスナックに登場するなんて!

東ママ:いつもオッサンの飲み物しかない店なのに!

 

 3人は乾杯した。…何に?

 

西ママ:よくぞ、この店を引き継ぐ決心をしてくれました!

東ママ:ありがとう、くわたさん!

 

 とうとう来たのである。ママの世代交代が。

 

くわた:とても緊張しています。大丈夫かな。

東ママ:緊張しないでくださいよ、大丈夫、大丈夫。私たちでもできたんだから。

西ママ:くわたさんは、確かミレニアムベイビーだったわね。

くわた:はい、2000年生まれです。

 

 くわたさんは23歳。20代のスナックのママが誕生するのである。

 

東ママ:このお店では、大人とは何かってことを考えるんだけど、改めて聞くわね。くわたさんはどんな大人になりたいのかな?

くわた:店に来てくださるいろいろな大人の方たちの話を聞いて、自分のモデルを探してみたいです。

 

 にこやかに答えるくわたさん。笑顔がとっても眩しい!

 

東ママ:いろんな大人が来るわよ。やな感じの人とか。ほら、「老害」って言葉あるじゃない。

 

 東ママは、ちょっと意地悪く言ってみる。でも意地悪で言ってるんじゃない。自分もたくさん苦い経験があるから、くわたさんのことを心配しているのである。

 

西ママ:あのさ、松茸は綺麗なところに生えないんだって。

 

 ん? と顔を見合わす東ママとくわたさん。

 

西ママ:アナ・チンが書いてる「マツタケ」って本にね、松茸はフィンランドの美しい山とかには生えない、荒廃したほどほどに汚い森でしかダメなんだって書いてあった。

東ママ:へえ、そうなんだ。汚れている場所でしか成長しないんだ。

西ママ:異分子の混入があったり、菌だらけだったり。

東ママ:老害のあるところに人間も育つってわけね。

西ママ:攻撃とかされて強くなるのよ。害があるからこそ、実りがあるのよ。松茸なんていらんとか言われちゃったら身も蓋もないけどさー。

 

 くわたさんは二人の熟女の話に、静かに耳を傾けていたが、不意に口を開いた。

 

くわた:受け入れるんですね、考えすぎずに。害を排除しないで。

 

ママ✖️2:そうね〜。

西ママ:スナックって、いろんな人が良い空間を作っていくのが醍醐味なのよね。

東ママ:うん、いろんな菌が集まるところよね。

西ママ:荒廃したほどほどに汚い森みたくね。

 

東ママ:歳をとるってどうよ、西ママ?

西ママ:老化は避けられないよね。でもね、肉体は衰えるけどね、精神は成長するってことあるわね。

東ママ:私もまだまだひよっこだな。スキー場に行けば90歳のインストラクターとかいるもんね。肉体は衰えても、指導はできるのよね。

 

 しばし、黙り込む3人。

 

東ママ:さてと。西ママはこの店引退したらどうするの?

西ママ:韓ドラ見まくる。東ママは?

東ママ:旅に出る。

くわた:わたし、がんばります! 

ママ✖️2:応援してるね!

 

 2年以上続いたダブルマキコのバーチャルスナック。時々バーが混ざったけど、「大人エレベーター」が全22回、若者が登場する「大人へのエレベーター」が全8回。

 

 ご来店いただいたインタビューイーの皆様、誠にありがとうございました。そして、スナックネタを覗きに来てくださった読者の皆様、長らくのお付き合いありがとうございました!今後はうら若き、「あきらママ」がスナックを切り盛りします。乞うご期待! たまにマキコママもお邪魔します♪

 チャオ!!

 

(了)

bottom of page