Guest 14

 

1周年だよ! 

全員集合!

お客様:「トガル!」編集部御一行様

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チーーーン。チーーーン。チーーーン。

 

エレベーターのベルが次々に鳴り、スナックまきこはあっという間に満席となった。

 

ママ:いらっしゃいませ。お待ちしておりました。今日は、みなさんのお話を聴かせてもらいます!

 

 今宵はこのスナックまきこで、「トガル!」1周年を編集部のメンバーで祝うのである。

 

ママ:私の留守中には「Barまさのり」お疲れ様でした。さて、何を召し上がる?

佐藤:コロナビール、お願いします。

 

 しゅぽっと栓が抜かれた細身のビンとグラスが佐藤さんの前に置かれる。グラスに注がれる黄金色が一気にお祝い気分を盛り上げた。メンバーそれぞれが好みの飲み物をリクエストし、記念の夜が始まる。

 

ママ:そもそも「トガル!」の編集部の面々は、何を「トガル」としているんでしょう。1周年だから語ってもらいましょう!! 

 

古屋:そやな、おもろさを最優先するところかな。

 

古屋さんは烏龍茶のグラスをカウンターに置いてつぶやいた。

 

ママ:おもろさ? ということは、R-1グランプリで客をどっと沸かせる? 的な?

古屋:ちゃうちゃう。人が見たらどう思うかとか世間的にはどうかとか気にせず、自分の直感みたいなもんを優先させるいうことです。

ママ:余計わからんわ。

古屋:つまり、何かを客観的に論じるとかやのうて、みんなが直感的に、自分を起点に語る、それが「トガル!」というメディアちゅうことです。直感には、感情、思い、これまでの経験が含まれる。当たり前っちゃ当たり前やけど、みんな自分とは全然違う時間を過ごしとるわけやないですか。個人の歴史がある。育った家庭、家族の歴史。だから、常々、他人てほんまにどんな人でもおもろい。そんな個人のおもろさが色んな形で表現される場やったらええなあって。

ママ:なるほど。で、古屋さん自身は、マックスが5としたら「トガル度」いくつ?

古屋:3。

ママ:へ? 5ちゃうの⁈

古屋:いやー、人が見たらどう思うかな、世間的にはどうかな?って思わんわけやないし、中途半端な「3」くらいが僕やと思う。

ママ:意外に謙虚!

内山:僕も3だな。

 

 にこやかに焼酎水割りを飲んでいた内山さんが口を開く。

 

ママ:内山さんは、どんなところが尖っているの?

内山:怒ってる時ほど笑ってるところです。

ママ:今、笑ってるじゃないですか。怒ってる…?

内山:あまのじゃくなのかなあ。表に出す感情やことばと内心は異なっています。自分も他人も信用してないのかもなあ。

ママ:クールね〜。私、すぐ顔に感情出ちゃうし。

三代:僕も3。ちょとずつなら変えられると思ってる。それが「トガル」かなあ。

 

 ロックでウィスキーをやっていた三代さんも話に加わる。

 

ママ:へえ。三代さんは今まで何を変えてきたの?

三代:何を変えてきたかって?

 

 視線をカウンターに落とし、三代さんはフっと鼻で笑う。

 

三代:自分で言うもんじゃないですね。仕事を見てもらえれば(フっとまた笑う)いいんじゃないですか?

松本:私も3です。尖っているかどうかわかりませんが、疑う姿勢は大切にしています。

ママ:疑う? 

梶原:あのー、私にとって尖っている人は、何か変えられるとか、何か起こせるってことを信じている人です。芯を持って自分以外のものに働きかけられる人。「信じる」って言うのがポイントかと。

ママ:「疑う」と「信じる」っていう相反するワードが出てきましたね。でも、この二つは「トガル」に関しては矛盾しているようには思えないわね。

松本:そうですね。私が言う「疑う姿勢」は、エポケーというか、括弧に入れるというか、いったん立ち止まって考えてみるということです。そうすることで、自分を疑うことができるし、他者に対しても、やはり、それは本当にそうなのか?って向き合うようにしてます。そんなひねくれたところが、尖っていると言えなくもないかな。そして、梶原さんがおっしゃる「何かを起こせると信じること」も信念ですし、矛盾していないと思います。

ママ:ふむふむ。「トガル」って信念や理念を持ってるってことかな。梶原さんはトガル度いくつですか?

 

 梶原さんは吉四六のグラスを傾けながら、「私、尖ってないと思います」と言った。梶原さんは、一般公開の「トガル!」のオフ会のような場に参加した。その場で「トガル!」の編集部員を募ったところ、手を挙げ、メンバーに加わったのであった。

 

ママ:え? そうかな。「トガル!」の編集部に自ら入ってきた、その姿勢こそ尖ってるんじゃないですか。

本間:私も最近、自分にはトガリ要素がないんじゃないかと不安になっています。

 

 梅酒のお湯割りを飲んでいた本間さんも「尖っていない」と言う。そんなことない、とママは思う。本間さんは平然としながらどんどん高みを目指してチャレンジし続ける人なのだ。

 

若林:私も尖ってません。

ママ:ん? そうなんですか?

 

 瓶ビールを手酌でグラスに注ぐ若林さんをママは見つめる。若林さんも梶原さんと同じくオフ会で自ら編集部に入ってきた人なのだ。

 

若林:トガルって、人と違うことを選ぶことじゃないかな。尖ってる人っていうのは、人よりも苦しい道を、苦しいと知っていて敢えて選ぶ人。そんな気がします。私はトガルことに対して憧れるけど、険しい道を選んでるとは言えないし、まだ全然尖ってないと思うんですよね。

 

 ママはしばし考え込む。そっかー、尖り度が高い人はいばらのみちを歩む人なのか〜。

 

ママ:ところで、佐藤さんは? どんなところが尖っているの?

佐藤:あご。

ママ:…。

佐藤:あ、人生です。

ママ:人生のどんなところが尖ってるんですか?

佐藤:芝居です。芝居って尖ってないと続けられないと思います。もうやめちゃったから、今はトガリ度2ですけど、やってた時は4かな、ギラギラしてました。日本語教師になってから保守的になりました。

ママ:そうなんだ。佐藤さんがギラギラして芝居している姿、見たい人たくさんいるでしょうね。私も見たい。

佐藤:ママのトガリ度は?

ママ:私も3かな。

佐藤:どんなところが?

ママ:怖がりのくせに危険なことに自ら突入してしまうところ。熊出没の危険を知りつつ一人で渓流釣りしてて、熊は出なかったけど足滑らせて川にはまって流されました。自力で脱出したけど。あと、売られた喧嘩は即買いしてしまうところかな。自分でもアホだと思うけど。

西のマキコ:私は4よ、トガリ度。

 

ウイスキーの水割りのおかわりを自分で作って飲んでいた西のマキコママが、ついに談義に参戦してきた。

 

ママ:さすがね、西ママ。どんなところが?

西のマキコ:周りから非常識だと咎められても、非常識な生き方がやめられないところ(笑)。

ママ:非常識? 例えば?

西のマキコ:二股とか、クラブのホステスとか。

ママ:わーお。なんかかっこいいなあ。自由だなあ。

西のマキコ:ふふふ。

 

ママ:じゃあ、みなさん、お約束の「大人とは」について語ってください!

西のマキコ:自由のために生きる人。

ママ:あ、やっぱり! 自由!

古屋:楽になった人。

ママ:ん? それも「自由」と同義なのかなあ…。

佐藤:黙っていなくならない人。辞めるときにはちゃんと「辞める」と言って辞める人。

ママ:なるほど! それ、本当に重要!

三代:何かを守るために、何かを捨てることができる人。

ママ:あー、それ共感できる。何かに執着して大人になれない、それは私。

松本:自分の機嫌を自分で取れる人。

ママ:他人のせいにしないってことかなあ。

本間:自分では大人になったつもりでも、親に会うたび子どもに戻る。無限のループですね、不思議。

ママ:親子の関係は不滅ですからね…。

内山:大人しいこと。

ママ:え? 静かってこと?

内山:いいえ。穏やかな状態に自身を置いておける、その環境を自身で整えることができてるって意味です。その人に関わる相手が穏やかでいられるような言動ができる。それでいて、自身のしたいことを禍根残さず周囲も巻き込んで実現できていることかな、と。

ママ:はは〜。なるほど。それで、怒っているときほど笑ってるのね。

 

 ママは、内山さんの表情をじっと観察する。笑っていない。よかった、機嫌がいいみたい。

 

内山:笑ってる=怒ってるじゃないですよ、ママ。

 

 内山さんはママの腹を見透かしてそう言った。クールだよな、内山さん…。そういえば「クールファイブ」に内山…。それを言うなら「内山田洋とクール・ファイブ」や! あはは、とママは心の中で笑う。昭和世代にしかわからないロンリーボケツッコミ。

 

若林:大人って、自分から離れられる人かな。

ママ:離れる? どういうことですか?

若林:ジブンヲ勘定ニ入レズ。

ママ:んん?

若林:宮沢賢治です。「我」をなくして生きられる人。そういうものに私はなりたい。

ママ:病気の子どもや疲れた母のために東へ西へゆく、そんな人かしらね〜。

梶原:大人とは、調整できるようになること。

ママ:状況や尖り方を調整できるのも大人ですよね。

梶原:それから、トガリを自覚することと、外から尖っていると認識されることとは違うと思います。そのあたりを自覚して尖り方を調整できるのが大人ですかね。ていうか、本気で尖っている人は、そんな調整なんて気にしないのかな?

ママ:んー。そう言われると、トガルことと大人であることは比例しないかもしれないですね。うん、別問題ですね、これは。

 

 トガルと大人は別問題。果たしてそうなのか⁈ 新たな課題を発見した「トガル!」1周年記念会であった。

 

西のマキコ:ところで、東ママ。知ってた? 「トガル!」のアクセス記録、最近伸びてるのよ。だけどね、「スナックまきこの大人エレベーター」のアクセス数、全く大したことないのよ。寂しいもんよ。

ママ:げ。そうなの? 反省! 最近、あんまりおもろいこと発信できてないからなあ。なんか真面目に生きちゃってて…。根が正直で生真面目なのよ。まずいわ、丸すぎる。

西のマキコ:もっと、尖らなきゃダメよ!

ママ:はい。シャキンシャキンに尖れるよう、精進します!

 

「トガル!」の企画が生まれたのは、ある冬の日にワークショップが催された大学セミナーハウス。八王子の野猿峠に鎮座する大学セミナーハウスは、ママにとっては子どもの頃から馴染みのある施設である。祖父母の家から歩いてすぐだったし、叔母も働いていた。林の中のその奇妙な建造物は、西欧の田舎のお化け屋敷のようにも見えた。その雰囲気は、ママが大人になった今も変わらず、静かで、ひんやりとしていて、どこか寂しい。しかし、そんな冷ややかな静寂も、人が集まり、思考が交差し、熱のこもったことばが飛び交えば、一気に温かな賑わいに変化した。大人って、どんな状況でもいろいろな他者と楽しめる人じゃないかな?とママは思う。子どもはいろんな人と接していろんなことを見たり聞いたりしたりして、楽しみのオプションを少しずつ体内に貯めていきながら大きくなるんじゃないのかな。

これからも、「トガル!」には、太陽のように熱を放って、世の中を明るくしてもらいたい!! 編集部よ、楽しみながらがんばれー。スナックまきこもアクセス数が増えるようにがんばります!

 

スナックマキコの大人エレベーター。それは、様々な文化を育む大人が場末のスナックに語りにやって来るエレベーター。次回はどんな客が訪れ、何を語るのだろうか。乞うご期待!

文:東のマキコママ

​イラスト:西のマキコママ