Guest 2 木を売るオトナ


 

パッパー

 

スナックマキコ、15:00。

出勤前。

郊外の山の中にある古家の二階の窓から見下ろすと薪を乗せた白い軽トラック。

軽トラックから降りたのはツナギ姿のメガネの中年男性。

背はひょろっと高い。180センチくらい。

あだ名はジャイアン。

 

K:ママきたでー!

M:あーすいませーん。

 

K:チェーンソーの調子はどうや?

 

M:いやー、あれ、やっぱ無理っすよ。amazonで安いの買ったらだめっすね。

 

K:もうええ加減うちから全部買いやって。

 

M:いや、でも1立米30000でしょ。高いし。。。せっかく斧もチェーンソーも買ったし。。。

今日の客人はKさん。

某森林組合の所長。実質上の社長。

 

しかし、世間一般の社長とは全く一線を画す、繋ぎの似合うオトナである。

いまだにチェーンソーを握り、自分で現場に足を運ぶ。

薪を薪棚に一緒に置きながら、ママとの会話スタート

 

 

M:Kさん、なんで薪ストーブとかやってるんですか。

 

K:森林組合はねー、もともと杉を切っとったんですけど、ここらの森林の79%は雑木なんですよ。杉は少ないんで、新しい事業として雑木を切るようになったんですよ。こういうナラの木を。でもあんま売れんし。そんで薪やらんならんなーと。

そしたら自分も薪ストーブもたんなーと。使ったことないもの勧められんで。

ほんで5年くらいやってます。

 

M:なんで薪ストーブがいいと思うようになったんですか。

 

K:昔からボランティアいろいろやってきて

福島で子どもキャンプとかやっとって、そんでエネルギー的なことを習って

薪ストーブに変えたら多少は役にたつなーと

 

M:もともと森林組合ではたらいとったの?

 

K:いや、建築やってました

 

M:建築?なんで建築から森林組合に?

 

K:おもんないなーって

 

M:ワハハ

 

K:夜遅いし。

 

M:でも、普通建築って聞いたらおもしろそうだけど。

 

K:いやー、建築ゆうても事務所で図面ひいたりとか現場管理とか。

ぼくらリフォームとかそんな簡単なことで、建築家みたいなすごいことじゃないし。

金額はよかったけど休みもないし。

それが26のこと。今51で。もう25年か。。。

 

M:他の仕事もいろいろあったのになんで森林組合?

 

K:二人目の子どもうまれそうなとき仕事やめて、なんかログハウス作る仕事いいかなーと思ってさがしとったら、ちょうどログハウスがうれんくなってきて、面接行っても、設計管理でこいと言われて。そら一緒やって。

気楽な現場が一番いいのに。

 

そしたら森林組合でログハウスとかやってるところあるって聞いたから電話して、ちょっと面接してっていったら、「あーいいよー」ってそれが今の組合長。そんだけで笑。

 

そんで行きはじめて三日目か四日目くらいに子どもうまれたから、「あー、産休とらんなって」また行かんくなったけど。笑。嫁の実家福井やったし。なんかそういうのも許してくれるのもよかったかな。そっからひたすら林業。

 

M:林業はどう?

 

K:日本の林業ちゅーのはだめや。こんなだめな産業ない。うちの売り上げ10億。70人も社員おるのに成り立たん。そんでも全国で上位に入るくらいや。

 

M:なんで林業ってだめなん?

 

K:木は値段が上がらん。

それの市場規模がきまっとる。あげようがない。どんだけやっても一緒。

 

M:どうしたらいいんですか。

 

K:しゃーない。ほかのことするしかない。

ここだとキャンプ場をもっとる。

でも今年はコロナで全然だめやったな。

 

M:薪事業は?

 

K:薪は全然だめ笑。100万もいかん。

そんなに一生懸命やってないし。うちらより前にやっとった業者の客をとってもいかんし。

それに、これは、金のためじゃなくて、地球環境のためにやっとることや。

 

M:森林組合やめたら、なにするんですか。

 

K:薪を売ることをぼちぼちやろかなと。

薪ストーブにする人増えた方がいいと思うし。

 

M:儲からんって言ってたじゃないですか

 

K:ほんでええねん。

なんとかなるわ。

 

M:しょうがないなあ。

じゃあ、今度うちで一杯サービスね。

 

K:ニヤリ

 

Kさんのもう一つの顔は金沢トレイルをつくること。金沢の里山に分け入り、道をつける活動を続けている。道をつけると里山も守れるという。白い軽トラを乗りこなすジャイアンは、日々の「おもろい」を追求するオトナだった。

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スナックまきこの大人エレベーター。

それは、様々な文化を育む大人が場末のスナックに語りにやって来るエレベーター。

次回はどんな客が訪れるのか。乞うご期待!

本文:西のマキコママ 

​イラスト:東のマキコママ

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