#27
永松茂久『君は誰と生きるか』
井元麻美
ある大学の日本語授業で同じレベルを担当している先生たちと今学期の「お疲れ様会」をするために、大阪へ行きました。集合時間まで時間があったので、ふと本屋へ立ち寄りました。
特にあてもなく歩き回っていると、クリーム色の背景に茶色い字でシンプルに書いてある「君は誰と生きるか」が目に入ってきました。そして、今自分が必要としていることばのような気がして、本を手にしてレジに並んでいました。
本の1ページにはこのように書いてありました。
素敵な人と出会って、人生をより良いものにしたい。
人脈が少ないことに劣等感を感じてしまう。
今、まわりにいる人とのつながりに違和感を持っている。
知り合いのSNSを見ることに気疲れをしている。
うまくいっている人や幸せそうな人を見ると、心がざわつく。
人につい合わせようとしすぎてしまう。
仕事で苦手な人に悩まされている。
大切な人と別れてしまったつらさとどう向き合えばいいのか。
本当のつながりを手に入れたい。
(『君は誰と生きるか』p.1より)
「私やん」となりました。博士後期課程に入学してから、いろいろな学会や研究会に参加するようになり、多くの人に出会いました。たくさんの人に出会い、後輩もでき、楽しいこともたくさんありますが、さまざまなことを考えると「しんどい」と思うことも増えました。このように思っていたときに出会った本です。
この本は、著者と師匠の会話をベースに書かれています。著者は、人生は出会いで変わると考え、遠くても人に会いに行っていました。このことに対して、師匠は「時間とお金がもったいないな」(p.21)と言いました。そして、なぜもったいないのかを話し、師匠は「ここからの人生、君は誰と生きる?」(p.26)とプロローグを締めくくっています。
ちょうど悩んでいた私は、この一言にドキッとしました。『君は誰と生きるか』は、出会ったたくさんの人の中から、いつも近くにいる身近な人を大切にしてほしいということが書かれています。
あなたは、今いる場所を大切にしているだろうか?
お客さんは喜んでくれているだろうか?
あなたの大切な人たちは幸せだろうか?
(『君は誰と生きるか』p.102より)
当たり前と思われる方もおられるかもしれません。
博士後期課程へ進み、出会いの幅が広がり多くの人と知り合うことができましたが、さまざまな人に気を遣いすぎて、自分にとっての大切な人が見えなくなってしまっているのではないかと感じました。
このことから、「私にとっての大切な人は誰だろう」と考えました。家族は私の生活を支えてくれる人たちであり、ゼミの指導教員と研究仲間は研究を支えてくれる人たちであり、博士前期課程のときの仲の良いメンバーは仕事を支えてくれる人たちであることを思い出しました。
文章を書くことが苦手で、人に頼ることも苦手な私ですが、「なあ、聞いてくれへん?」と言うと、大切な人たちが聞いてくれて、一人では見えなかった道を明るく照らしてくれます。また、生活、研究、仕事で大変なとき、大切な人たちは、「どうしたん?」といつも寄り添ってくれます。大切な人たちがいなければ、今の私はいなかったと思います。
また、本には「苦手な人がいる自分を責めている人へ」があります。私は親の教育や自分自身の性格から苦手な人がいることはよくないと考え、つらい時期がありました。しかし、本の中で、苦手な人がいることは「いい、悪いじゃなくて、当たり前のことなんだよ」(p.134)という部分があります。そういえば、母や仲の良い人から「みんな好きになってくれるわけちゃうし、当たり前やん」と言われたことがあることを思い出しました。知らない間に大切な人から助けてもらっていたのにすっかり忘れてしまっていたことを思い出しました。そして、どうしたらいいのだろうと思い、本を読み進めると「好きな人や好きなこととの時間を今の何倍にも増やすことだよ」(p.135)とアドバイスが書いてあり、この部分を読んで気が楽になりました。
この本を読み、無理をしないこと、大切な人がいてくれるとことに再度気づくことができました。今後も忙しさなどで見失いそうになったときは、「君は誰と生きるか」と問い直したいと思います。
紹介した人:いもと まみ